俺様社長と秘密の契約
「…そうか、会長がそんな事を言ったのか?」
「はい、時間をどんなに調整しても、夜の8時までは、時間を作れませんでした」

そう言ってシュンとする私を、社長は優しく抱きしめた。

「竹田さんには俺から伝える。…必ず行こう。二人で」
「・・・はい」

お爺様の意向を伝え、私たちは、少しでも仕事が早く終わるよう仕事に集中した。

…午後7時。少しだけれど、仕事が早く終わりそうだった。

そんな時、私の携帯が鳴る。

「もしもし」
『理子さんですか?』

電話の主は、竹田さんだった。

「はい、そうですが、どうかしたんですか?」
『…会長の容体が急変しました』

「エッ?!」

携帯を落としそうになりながらも、何とかそれを必死に握りしめた。

『…お医者様が言うには、もう時間がないと。
会長は、ずっと、理子さんの名前を呼んでおられるんです。

…少しでも早く、会長のお傍に』

そう言った竹田の声は震えていた。

「わかりました、すぐにそちらに向かいます」

携帯を切り、帰り支度をする。
そこへ、社長が出てきた。

「…どうした?」
「…お爺様が。…お爺様の容体が急変したと連絡が」

その声は震えている。
…私が大事だと思う人は、どんどん離れていってしまう。


「…分かった、仕事の事は大丈夫だ。行こう」

立っている事もままならない私の肩を社長はしっかりと抱き、 神宮寺邸に急いだ。
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