気持ちの伝えかた
富岡心優の場合
気が付いたら、好きになってた。

理由なんてきっと些細なことだった、私自身が鮮明に覚えていないくらいちょっとしたこと。

気が付いたら、いつも探してた。

視界に入ると自然に表情がほころんでしまう、心が高鳴って耳まで火照ってしまうけれど。

その姿を見たら、話しかけていた。

他愛のない話、その場で思い付く限りのことを言の葉にのせて。あまりしつこく話すと困らせてしまうから、引き際が肝心。もっとたくさんいろんな話をしたいけれど、我慢も必要。

はっきりとした目鼻立ちにすらっと伸びた身長、その黒髪はいつも綺麗に手入れされていて艶やかに輝いている。
美形、この言葉が的確に彼を表現できる。

すべて私のものにしたい、私だけのものになってほしい。
でもそれは叶わないことだってわかってる、一方通行だってわかっている。

それなのに彼は私を嘲笑うように話しかけてくれたりするから、止められなくなってしまうの。

みんなのアイドル的存在、誰からも好かれる彼は到底私なんかでは高嶺の花。
それでも少しでも振り向いてほしくて頑張ってしまう。

今だけは、この瞬間だけは私だけを見てて。私が一番だと感じさせて、例えそれが偽りだとしても。

日当たりの良い場所でうたた寝してる彼に覆い被さるように、私は一歩を踏み出して叫んだ。


「クロ、心優(みゆ)お姉ちゃんが帰ってきまちたよぉ!!」


大好きが止まらない、愛が加速しちゃう。
女を虜にしてしまう魔性の猫__クロは抱きついた私を見て不機嫌そうに声をあげた。
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