気持ちの伝えかた
麻田敬介の場合
盛大に行われる体育祭。
赤と白に分かれチーム一丸となり勝利に突き進むアウトドア派歓喜の行事であり、インドアな俺からしたら鬱陶しい行事の一つである。
汗を流すことを嫌い、群れることを嫌い、喧騒を嫌いとする俺には苦行だ。
だからこうして人気のない教室に戻り、静寂を謳歌していたのだが…
「なぁ、お前…なにしてんの?」
机に突っ伏しているところに突如、目の前で仁王立ちして動こうとしない女子が現れた。
頭に赤のはちまきを巻き黒髪を後ろで結び、黒縁眼鏡の奥から覗く瞳には何やら怒りがこもっているように見えた。
「麻田くんこそ、なにしてんの?」
質問を質問で返すタイプはどうも苦手だ。
というか、なぜ名前を知っているのだこの女子は。
「俺は見ての通りさぼってるよ。で、お前は?」
「そんなサボり魔を見つけ注意喚起する係です」
「それはそれは…なんとも迷惑きわまりない係もあったもんだ」
歓声が一層大きく聞こえる。
何かどんでん返しでもあったのか、怪我人が出たのか俺の位置からでは見えなかった。
見たところで特に興味もないけれど。
「で。その係さんは俺をあの騒がしい校庭に連れ出して、面倒臭い行事を続けろとでもいうのかい」
「ご明察、と言いたいところだけど」
仁王立ちをやめ鼻があたるほど近付いてきたと思えば、にやっと微笑みを浮かべる。
「やる気のない生徒を戻しても士気が下がるだけなので、仮病でも何でも使わせて保健室へ移動させたいと思います」
本人の意思に関係なくね、と一言加えられたと思えば両肩を掴まれ持ち上げようとしてくる。
確かにこちらの意思表示なんてものには興味がないらしい、俺は気だるい体を起こし席から立ち上がった。
「お、聞き分けの良さは称賛に値するね。早速保健室までご同行願いましょう、麻田くん」
首にかけていたホイッスルを口にあてがい、軽快に音をならし促す姿は余計に疲れを感じさせる。
大人しく従って保健室で寝るとするか、俺は軽く考えながら前進する彼女に伸びをしながら付いていった。
赤と白に分かれチーム一丸となり勝利に突き進むアウトドア派歓喜の行事であり、インドアな俺からしたら鬱陶しい行事の一つである。
汗を流すことを嫌い、群れることを嫌い、喧騒を嫌いとする俺には苦行だ。
だからこうして人気のない教室に戻り、静寂を謳歌していたのだが…
「なぁ、お前…なにしてんの?」
机に突っ伏しているところに突如、目の前で仁王立ちして動こうとしない女子が現れた。
頭に赤のはちまきを巻き黒髪を後ろで結び、黒縁眼鏡の奥から覗く瞳には何やら怒りがこもっているように見えた。
「麻田くんこそ、なにしてんの?」
質問を質問で返すタイプはどうも苦手だ。
というか、なぜ名前を知っているのだこの女子は。
「俺は見ての通りさぼってるよ。で、お前は?」
「そんなサボり魔を見つけ注意喚起する係です」
「それはそれは…なんとも迷惑きわまりない係もあったもんだ」
歓声が一層大きく聞こえる。
何かどんでん返しでもあったのか、怪我人が出たのか俺の位置からでは見えなかった。
見たところで特に興味もないけれど。
「で。その係さんは俺をあの騒がしい校庭に連れ出して、面倒臭い行事を続けろとでもいうのかい」
「ご明察、と言いたいところだけど」
仁王立ちをやめ鼻があたるほど近付いてきたと思えば、にやっと微笑みを浮かべる。
「やる気のない生徒を戻しても士気が下がるだけなので、仮病でも何でも使わせて保健室へ移動させたいと思います」
本人の意思に関係なくね、と一言加えられたと思えば両肩を掴まれ持ち上げようとしてくる。
確かにこちらの意思表示なんてものには興味がないらしい、俺は気だるい体を起こし席から立ち上がった。
「お、聞き分けの良さは称賛に値するね。早速保健室までご同行願いましょう、麻田くん」
首にかけていたホイッスルを口にあてがい、軽快に音をならし促す姿は余計に疲れを感じさせる。
大人しく従って保健室で寝るとするか、俺は軽く考えながら前進する彼女に伸びをしながら付いていった。