気持ちの伝えかた
園田哲平の場合
冬空の下、俺は紫煙を燻らせながらとある女性の到着を待ちわびていた。
世間はクリスマスカラーに染まり、街中では定番のクリスマスソングが流れている。
サンタ役を担う人々も、財布を握る人々も大変になる季節だ。
もちろん恋人たちもそれなりに忙しくなるだろう、理由は様々だろうが。
携帯灰皿にタバコを押し込み、腕時計に目を向ける。待ち合わせ時刻まであと五分といったところか。
「…にしても、こうも人が多いと分かるのかねぇ」
待ち合わせは分かりやすいところがいい。
そう思い駅前広場にしたのはいいのだが、ここまでの人口密度とは思わなかった。
ここの路線を利用して仕事にいくときいていたのもあるし、そのまま来れるから良いだろうと思ってやったこととはいえ…。
普段電車を利用しない人間からしたら、ここから一人の人間を探しだせと言われても自信がない。
よくこんな人通りの多いところを平然と歩けるもんだ、関心さえしてしまう。
最高、排気ガス吐き出す害悪自動車、万歳。
免許は持ってて損はないなやっぱり。
自然と胸ポケットをまさぐり、消したばかりのタバコにまた手を伸ばそうとしてしまう。
既に携帯灰皿はパンパンに近い状態、そして体にも優しくないとわかっていても無意識にやってしまう。
「これは、緊張してんだな…俺らしくもねぇ」
ひょうきん者で通ってるくせして、根っこは小心者だなこりゃ。
いやまて、これから行うことの大きさと重大さが俺をこんな風にしているのではないのか?
そうだ、きっとそうにちがいない。
人生の分岐点であり、第二の人生の幕開けになるやもしれないのだから。
タバコをしまい、両手で頬に一喝。
しっかりしろ、空気を完全に俺のものにしろ俺が中心だと思ってやればいい。
べたに予約しといた高級フレンチを楽しんだあと、そのままホテル…じゃない。
夜遅くまで開いている高層タワー内のバーで夜景を肴に酒を嗜む。
そして彼女を家まで送り届ける道中に寄り道して、そこでコイツとあの言葉を口にするんだ。
「俺と…いや、僕と結婚してください」
奮発したダイヤの指輪、カラットはしょぼくても天然ダイヤの輝きは断然だ。
もっとオリジナリティを加えても良かったのだが、彼女はべたなシチュエーションが好きだと前に言っていた。
そんな願いを叶えてこその男だろう。
返事はイエス、がいいなやっぱり。
断られたらそのあとの空気はどうしたらいいのか、そのまま別れ話に発展とかしてしまわないだろうか。
もしそうなったらこの指輪はどうすべきか。
買って差し出したものだからと渡すべきか、そのまま質屋にもっていって二束三文の金にするか。
つか、どんな顔すればいいのだろうか。
笑う、悲しむ、もしくはキレる?
いやいや、最後はおかしいだろどう考えても。自分中心過ぎるこれはちが__
「練習、聞こえちゃったんだけど…どうしようか」
聞きなれた、声。
声のする方へ振り向くと、顔から火が出そうになった。
「あ!? おま、居たのかよ!?」
「哲平(てっぺい)から誘ってきたんじゃん、来るよそりゃ」
いや、まぁ、そうなんですけども。
「で、さっきのは聞こえなかったことにした方がいいよね?」
その提案は全力で賛成だが、本人に既にばれている状態は如何なものかと思うのだが。
俺が一人頭を抱えて考えていると、彼女は手をぱん!!と叩き何処かへ走り出してしまった。と思ったら大急ぎで帰ってきた…なにがしたいんだ?
「ごめーん!! 待たせちゃった、ここ人多いからさー」
すべてを無にした、だと。
世間はクリスマスカラーに染まり、街中では定番のクリスマスソングが流れている。
サンタ役を担う人々も、財布を握る人々も大変になる季節だ。
もちろん恋人たちもそれなりに忙しくなるだろう、理由は様々だろうが。
携帯灰皿にタバコを押し込み、腕時計に目を向ける。待ち合わせ時刻まであと五分といったところか。
「…にしても、こうも人が多いと分かるのかねぇ」
待ち合わせは分かりやすいところがいい。
そう思い駅前広場にしたのはいいのだが、ここまでの人口密度とは思わなかった。
ここの路線を利用して仕事にいくときいていたのもあるし、そのまま来れるから良いだろうと思ってやったこととはいえ…。
普段電車を利用しない人間からしたら、ここから一人の人間を探しだせと言われても自信がない。
よくこんな人通りの多いところを平然と歩けるもんだ、関心さえしてしまう。
最高、排気ガス吐き出す害悪自動車、万歳。
免許は持ってて損はないなやっぱり。
自然と胸ポケットをまさぐり、消したばかりのタバコにまた手を伸ばそうとしてしまう。
既に携帯灰皿はパンパンに近い状態、そして体にも優しくないとわかっていても無意識にやってしまう。
「これは、緊張してんだな…俺らしくもねぇ」
ひょうきん者で通ってるくせして、根っこは小心者だなこりゃ。
いやまて、これから行うことの大きさと重大さが俺をこんな風にしているのではないのか?
そうだ、きっとそうにちがいない。
人生の分岐点であり、第二の人生の幕開けになるやもしれないのだから。
タバコをしまい、両手で頬に一喝。
しっかりしろ、空気を完全に俺のものにしろ俺が中心だと思ってやればいい。
べたに予約しといた高級フレンチを楽しんだあと、そのままホテル…じゃない。
夜遅くまで開いている高層タワー内のバーで夜景を肴に酒を嗜む。
そして彼女を家まで送り届ける道中に寄り道して、そこでコイツとあの言葉を口にするんだ。
「俺と…いや、僕と結婚してください」
奮発したダイヤの指輪、カラットはしょぼくても天然ダイヤの輝きは断然だ。
もっとオリジナリティを加えても良かったのだが、彼女はべたなシチュエーションが好きだと前に言っていた。
そんな願いを叶えてこその男だろう。
返事はイエス、がいいなやっぱり。
断られたらそのあとの空気はどうしたらいいのか、そのまま別れ話に発展とかしてしまわないだろうか。
もしそうなったらこの指輪はどうすべきか。
買って差し出したものだからと渡すべきか、そのまま質屋にもっていって二束三文の金にするか。
つか、どんな顔すればいいのだろうか。
笑う、悲しむ、もしくはキレる?
いやいや、最後はおかしいだろどう考えても。自分中心過ぎるこれはちが__
「練習、聞こえちゃったんだけど…どうしようか」
聞きなれた、声。
声のする方へ振り向くと、顔から火が出そうになった。
「あ!? おま、居たのかよ!?」
「哲平(てっぺい)から誘ってきたんじゃん、来るよそりゃ」
いや、まぁ、そうなんですけども。
「で、さっきのは聞こえなかったことにした方がいいよね?」
その提案は全力で賛成だが、本人に既にばれている状態は如何なものかと思うのだが。
俺が一人頭を抱えて考えていると、彼女は手をぱん!!と叩き何処かへ走り出してしまった。と思ったら大急ぎで帰ってきた…なにがしたいんだ?
「ごめーん!! 待たせちゃった、ここ人多いからさー」
すべてを無にした、だと。