気持ちの伝えかた
それにしてもこれまた大量の仕入れをしたものだ、セールが近いからとはいえ整理する下の人間にしたら悲鳴ものである。

雑な面もある店長はとりあえず倉庫に…ってところがあるから種類もバラバラに押し込められていて、書類と照らし合わせて探すのも手間がかかってしまう。

急ぎではないのが唯一の救いか。

なんて思いつつちらっと彼を見ると、たまたま目があってしまった。


「大丈夫っすか? 明かりあっても暗いっすから足元気を付けてくださいね」


作業が中々思うように進まないのは、倉庫のほの暗さもある。

申し訳程度の裸電球がひとつぶら下がっているだけで、明かりとしては心もとない。

今まで怪我人も出ていないからそのままにされているのか、経費の削減なのかは定かではないがおおよそ前者だろう。


「重いもの多いねぇ、大丈夫?」


それなりのものは私が少し気張れば運べはするし、男の子だからってあまり無理はさせたくない。


「体は丈夫なんで大丈夫っすよ!!」


ちょっと意味が違うような気はするけども…。


半分ほど検品と整理がついてきた頃、私はふと彼の言葉を思い出した。

他の人とは出来ないから

結構重い荷物もあるし、女手より男手があった方が作業もより捗るのではないだろうか。

重たいのは置いておいて、後で運ぶ

これもまた二重の手間なのではないだろうか。

そう考えると、ドクン、と大きく心臓が鼓動する。

何故、私でなければダメなのか。

他にも従業員はいるし、今日は力自慢の子もシフトが重なっている。

仕事が遅い子は出勤してきていないし、店もそう混雑していなかったから、私以外にも頼める人間はいたはずだ。

なら、何故?

自己中心的に考えるとするならば、私とやりたかった。

私とじゃなきゃ嫌だった、ってこと、なのかな。


「どうしたんすか、岡本さん。重いのなら俺やりますよ」


後ろから手を伸ばされ驚いた私は短い悲鳴をあげ後退りしてしまう、台の上にいるのも忘れて。


「あっ」


「あぶない!!」
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