気持ちの伝えかた
尾崎奈緒美の場合
俗に言う、干物女。
恋愛や流行に興味がなく、疎く面倒だと思う女。
まさしく私自身のことだと思った。
恋愛に重点をおかなければいけない年代に突入してはいるが、未だにそういった出会いもなく、それ自体求めてもいない。
恋愛で一喜一憂している同僚を見ても、焦る気持ちが出るわけでもない。
まず第一に男性に興味すら持っていない時点で、そういった事柄に発展する要素がない。
流行りのファッションやら音楽やら、それをいちいち追いかけていては時間もお金も無駄になる。
いつの時代も変わらず平凡といったものがあるのだから、それをそつなくこなしていれば問題はない。
同僚からすれば遅れてる、ダサい、話題が合わないなど様々なことを言われているであろうが、そんなのを気にしていてはこの世の中渡っていけない。
「そんなんだから、あんたは浮いた存在なのよ」
紫煙をくゆらせながら笑う、公私とも仲良くしている経理課の彼女。
私とは似た部分はあるが、根底が違っていて世渡りも上手だ。
「仕事そっちのけでコンパの話をするのが女子力なら、私には必要ないもの」
カフェラテを飲みながら、私はスマホ片手に喫煙する彼女に愚痴る。
こちらに視線を送り、彼女は鼻で笑いながらタバコの火を消しスマホをポーチに片付けた。
「女子力かどうかは分かんないけどさ、興味がないってのは建前なだけで臆病になってるだけなんじゃないの、案外」
私が、臆病?
「恋愛するもしないも個人の自由だけど、ここでそんな女子に対する愚痴こぼしてる時点で、根底にはなんか悔しいとかそんな思いあんじゃない?」
そんなことない、とは思う。
でも声を大にして反論できない自分がいるのも、事実。
「その様子だとまだ干上がってないんだし、そっちに意識を向ける余裕がないだけだと思うわよ?」
「そう…なのかな」
妙に納得出来る台詞に、私の心にも変化が現れる。
「それに案外、そばにいるかもよ? あんたを慕ってる人間が」
じゃあね、と彼女はポーチを持ち喫煙ルームから出ていく。
それとほぼ同時に、一人の男子社員が入ってきた。
「あ、尾崎さんじゃないですか」
素敵な笑顔で、私を見ながら。
恋愛や流行に興味がなく、疎く面倒だと思う女。
まさしく私自身のことだと思った。
恋愛に重点をおかなければいけない年代に突入してはいるが、未だにそういった出会いもなく、それ自体求めてもいない。
恋愛で一喜一憂している同僚を見ても、焦る気持ちが出るわけでもない。
まず第一に男性に興味すら持っていない時点で、そういった事柄に発展する要素がない。
流行りのファッションやら音楽やら、それをいちいち追いかけていては時間もお金も無駄になる。
いつの時代も変わらず平凡といったものがあるのだから、それをそつなくこなしていれば問題はない。
同僚からすれば遅れてる、ダサい、話題が合わないなど様々なことを言われているであろうが、そんなのを気にしていてはこの世の中渡っていけない。
「そんなんだから、あんたは浮いた存在なのよ」
紫煙をくゆらせながら笑う、公私とも仲良くしている経理課の彼女。
私とは似た部分はあるが、根底が違っていて世渡りも上手だ。
「仕事そっちのけでコンパの話をするのが女子力なら、私には必要ないもの」
カフェラテを飲みながら、私はスマホ片手に喫煙する彼女に愚痴る。
こちらに視線を送り、彼女は鼻で笑いながらタバコの火を消しスマホをポーチに片付けた。
「女子力かどうかは分かんないけどさ、興味がないってのは建前なだけで臆病になってるだけなんじゃないの、案外」
私が、臆病?
「恋愛するもしないも個人の自由だけど、ここでそんな女子に対する愚痴こぼしてる時点で、根底にはなんか悔しいとかそんな思いあんじゃない?」
そんなことない、とは思う。
でも声を大にして反論できない自分がいるのも、事実。
「その様子だとまだ干上がってないんだし、そっちに意識を向ける余裕がないだけだと思うわよ?」
「そう…なのかな」
妙に納得出来る台詞に、私の心にも変化が現れる。
「それに案外、そばにいるかもよ? あんたを慕ってる人間が」
じゃあね、と彼女はポーチを持ち喫煙ルームから出ていく。
それとほぼ同時に、一人の男子社員が入ってきた。
「あ、尾崎さんじゃないですか」
素敵な笑顔で、私を見ながら。