きみは、わたしの名前を呼んではくれない。
きみは、わたしの名前を呼んではくれない。
× やっぱり、今日も
「ねえ、」
今日もきみは、わたしにそう呼びかける。
やっぱり名前は呼んでくれなかった。
「なあに、コウくん」
だからわたしもいつもどおり、彼の名前を呼ぶその声に、ほんの少しの嫌味と対抗心を織り交ぜた。
だけどやっぱり今日も、きみはそんなことお構いなし。
「古典のノート見してくれない? さっきの授業、寝ちゃっててノートとれなかったんだよね」
「寝ちゃってて、じゃないよ……コウくんいつもそればっかし」
「だめ?」
こてん、とかわいらしく首を傾げ、上目にそう言う彼はあくまでも無意識なのだ。
女子力皆無のわたしには到底できっこないモテ技を、彼はこうも自然としてみせる。
……そんなモテ技つかわなくても、その綺麗な容姿でじゅうぶんモテているだろうに。
きっと彼は、モテるために生まれてきたに違いない。うん、間違いない。