きみは、わたしの名前を呼んではくれない。
だけど翌日、彼があまりにも普通だったから驚いた。
普通すぎるくらいに、本当の本当に普通だった。
いつもどおり寝てばかりだった。
意識しまくって緊張していたのは、残念ながらわたしだけだったみたいだ。
それならば、わたしもあくまで普通でいこう。うん、そうしよう。
そう決めてからのわたしの行動力といったらすごかった。
「遠野くん、遠野くん。コウくんって呼んでもいいですか!」
「なんでもいいよ」
みんなから苗字で呼ばれている彼だから、了承を得れたときはすっごく嬉しかった。
「一緒に帰りませんか、コウくん!」
「僕、放課後、図書室行くけど」
「いいです! ぜひ一緒に図書室にも行きたいです!」
いつも一人でふらっと帰ってしまう彼と一緒に帰れるなんて、彼女の特権だなと思った。