きみは、わたしの名前を呼んではくれない。


顔を隠すように前髪を触っていた手首を、退けるように掴まれてびっくりした。


初めて触れた彼の体温は、ちょっとひんやりとしていた。



「あのさ、僕、あれ告白オッケーしたつもりだったんだけど」



伝わってなかった?と、彼はやっぱり、こてん、と首を傾げて。


それに見惚れながら、彼の癖なのかもしれないなとぼんやり思った。



「…………」


「おーい」



わたしを覗き込む綺麗な顔がそこにあってハッとする。



「えと、……優しさ?」


「そんな優しさ備えてないよ、僕」


「じゃああれか、からかってるんだ。性悪だったんだコウくん」


「失礼極まりないね」



なんだって。なんだって。
頭がショート寸前だ。

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