きみは、わたしの名前を呼んではくれない。
「……ねえちゃんさー」
不貞腐れて弟のきたない部屋から出て行こうとするわたしにストップがかかる。
振り返るとゲームをやめた弟が、眉間にシワをよせて窓の外をじいっと見つめていた。
「お、なあに、かっこよく生きてる弟よ」
「うるせえ絞め殺すぞ」
「は、反抗期……!」
さっき自分でそう言ったくせに!
理不尽の塊だねきみは!
……でも反抗期な弟は怖いから、それは心に留めておこう。 エライ、おねえちゃん。
なんとか笑顔をつくり、外になにかあるの? と弟の方へ近寄ろうとすると、「きもいから近寄んなババア」と毒を吐かれた。
ひっ、ひどい……!
そこまで言うことないじゃないか! 実の姉に! しかもまだピチピチの高校生だ!