きみは、わたしの名前を呼んではくれない。
「はい、ドーゾ」
「ありがと、いつも感謝してマス」
机からひっぱり出してきたそれをわたしが両手で渡すと、彼も両手で丁寧に受け取った。
「感謝してるなら授業中にもう少し起きる努力をしようか」
「うん、これでも結構努力はしてるつもりなんだけど、ちょっとやっぱり眠気には」
「うそつけい。コウくんいっつも授業始まったときにはもう既に寝る準備万端なのわたし知ってるんだからね? 起きる努力どころか、寝る努力してるの知ってるんだからね!?」
「すごい、なんで知ってるの」
わたしが早口で言ってやると、彼は言葉とは裏腹に、そんな驚いた様子も見せないでそう言った。
な、なんで知ってるのってあなた……。