きみは、わたしの名前を呼んではくれない。
「ねえ、コウくん。急にどうしたの、びっくりした!」
「ん。 これ、渡したくて」
「え、な、なにこれ」
差し出されたのは、赤くて可愛い小さな箱。
でも今日は、クリスマスでもなければ、わたしの誕生日でもない。
どうして急にプレゼントなんて?
すると、ありゃ、覚えてないんだ。と、彼が意外そうな顔をした。
「こういうの好きそうだなって思ってたから、ちょっとはりきっちゃったのに」
と、ほんの少しだけ照れたような表情を見せた彼に、胸がドキドキと騒いだ。
お、落ち着け、わたしの心臓……‼
「あ、開けてもいい?」
「うん、ドーゾ」
「……わあ」
そっと赤い箱を開くと、そこで輝いていたのは三日月をモチーフにした小さくて可愛らしいピアス。
その曲線部分には、ターコイズブルーの華奢なストーンが埋め込まれていてとても綺麗だと思った。