きみは、わたしの名前を呼んではくれない。


「あれ、でもコウくん。 一ヶ月記念日は忘れてたのに、よく思い出したね?」



何気なくそう言うと、あーいや、と何やら言葉を濁す。



「一ヶ月記念日も覚えてたんだけど何かするもんなのかとかよくわかんなくて。
じゃあリサに怒られたんだよね」


「……え」


「女の子はそういうの楽しみにしてるものなんだから二ヶ月記念日はちゃんとしてやりなよって」



やっぱりそういうものなんだ? と呟いた彼の言葉にわたしはこたえられなかった。



「あ、リサっていうのはね」



ーー“リサ”

それはわたしの知らない女の子の名前で。


黒いモヤが、また広がっていく。

せっかくぽかぽかしていた心が、どんどん冷たくなっていく。

< 32 / 42 >

この作品をシェア

pagetop