きみは、わたしの名前を呼んではくれない。


「……ねえ、どうかした?」


ほら、また。

きみはわたしの名前を呼んではくれないんでしょう。


他の女の子の名前はいとも簡単に呼ぶくせに、彼女であるはずのわたしの名前は呼んではくれないんでしょう。


そんなあからさまに、わたしよ名前を呼ぶのを避けようとしなくてもいいじゃない。



ねえ、コウくん。


きみが「ねえ、」と私を呼ぶたびに、わたしがどんな思いできみの名前を呼んでいたか、きみは気づいていましたか。



きみにとっては、ほんの些細なことかもしれないけれど。


面倒な女だと思われるかもしれなくて、なかなか言い出せなかったけれど。




「コウくんの、バカ……!」



ほんとはずっと、苦しかった。

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