きみは、わたしの名前を呼んではくれない。
「僕のためにすごく工夫した綺麗なノートをとってくれてるミツキがすき。
いつも可愛い笑顔で僕の名前を呼んでくれる人懐こいミツキがすき」
「……っ」
彼の大きな手がわたしの髪を優しく撫でる。
「僕が他の女の子のことを名前で呼ぶとおもしろくなさそうにしてるミツキがすき。
“ねえ、” って呼ぶと、いつもとは違って切なそうに僕のことをコウくんって呼ぶミツキがすき」
「なに、言って」
「だからそんなミツキが見たくて意地悪しちゃった、本当にごめん」
耳元で囁かれる低く甘い声に、鼓膜が震える。
この声は、本当に彼のものなのだろうか。
「覚えてない? ミツキが僕にこんなふうに告白してくれたんでしょ。
だから、今度は僕の番」
ああ、そういえばそうだっけ。
ひとつひとつ、彼の好きなところを全部。
もういいよって言われるくらいまで伝え続けたんだった。