大切なものはつくらないって言っていたくせに
「それよりさ、遥ちゃんの仕事だよな。」
「………………。」
「俺、前から思ってたけど、遥ちゃん事務所入んねえかな?」
「事務所?」
「俺、今、芸能事務所のマネジメントの会社の社外取締役もやってんの。」
「うわ。いつのまにか。手広いねえ。」
「所属してるのは、芸能人だけじゃなくて、スポーツ選手とかジャーナリストとかコメンテーターとか幅広いからさ、料理研究家でもいいわけよ。 責任持ってお守りしますけど?なんてったって、話題の瀬田祐樹の嫁だからな。」
「うわ。金の匂いにすぐ飛びつく。遥をそういうかたちで売り出そうってんじゃないだろうな。」
「そりゃ、遥ちゃんのイメージ戦略まで考えてのことよ。 フリーでやってると結構怖いと思うけどな。お前の話題性で持ってかれて使われて終わりか。騒がれるのを嫌って露出を減らすと今度は仕事がなくなる。 俺なら、うまくコントロールできる自信はあるけどね。」
「 ………………遥にちょっと話してみるよ。」
「はは。そうだな。なんでも夫婦で話し合うのは良い事だ。」


その夜、龍一と別れて、その帰り道。
俺は、少し前から思い浮かんでいた事を現実的に考えてみた。

いっそのこと、俺たちの拠点を出会った街ローマに移すのはどうかと。

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