大切なものはつくらないって言っていたくせに
仕事も日本と離れていても遜色なくうまくいった。
ローマに住んでいる事で、小説の他に紀行文やエッセイの依頼も多くなる。
小説で煮詰まっても、これが良い気分転換にもなり、突破口となる事があって助かる。

遥の料理研究家としての仕事も、龍二のマネジメントのおかげで質の良い仕事を受け、雑誌の連載や料理本の出版、商品開発などにも手を広げる事ができている。
その他に、イタリア国内のセレブリティや日本の大使館で婦人達を対象に和食教室を依頼されたりして、忙しくしている。
樹は、平日はインターの学校に通い、週末は日本人学校の補習校で日本語を学び、グローバルな生活をしている。
今の時点で、イタリア語と日本語と英語を操っているから、今後どんなふうに成長していくのか楽しみだ。

そして、フェルは今でも俺たち家族と一緒に付き合いを続けている。
何だかんだいい奴なんだけど、遥のことも樹のこともきちんと幸せにしてやらなきゃ
黙ってないからな!というような感じで俺の行動の見張り役だと思っているんだ。

まあ、遥にも頭は上がらないが、フェルにも頭は上がらない。

そして、今、遥のお腹の中にはもう一つの命。
春には、また一人家族が増える。

誰がこんな人生を想像しただろうか。
俺は絶対に大切なものは作らないと言っていたくせに。
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