大切なものはつくらないって言っていたくせに
その店は、芸能人御用達。
顔が割れずに個室に向かえるから、お忍びではもってこいの店だ。
今の風貌の祐樹を見て、あの爽やかな二枚目俳優の瀬田祐樹だと気が付かれることはまずないだろうが、それでも何か感づかれたらそれこそ大スクープものだ。
あの、瀬田祐樹が見つかったっていうことになったら、世間はまた大騒ぎになるだろう。
それくらい、こいつはまだまだ世間から忘れられてはいない。影響力のあるやつだ。
祐樹は、久しぶりのまともな飯なのか、えらいガッツいて食べていた。
「うまい!」
ようやく腹が満たされたところで、祐樹は酒を少しずつ飲みながら事の真相を俺に告白し始めた。
失踪後、隠れるように日本各地を旅していたが、数週間で事務所に見つかってしまったこと。
撮影で亡くした仲間もおり、参っていたこと。
そしてこうなる前から役者を辞めたいと思っていたことを事務所に告げたが、受け入れられなかったこと。
事故が原因でPTSDも発症していて、少し休養をもらえる事になり、事務所の庇護のもと隠遁生活を送っていたこと。
その間にいくつかの文学賞に名前を変えて送ったら、新人賞を総なめに。
自分の正体がある出版社の人間にバレ、事務所にもバレてしまったこと。
事務所とは莫大な違約金で話をつけ、このまま俳優を引退し、作家として活動をつづけるという話がついていること。
今は極秘で動いているが、いつ週刊誌にスッパ抜かれてもおかしくないと、佑樹は酒を口にしながら語った。
この俺でも、祐樹の動向の情報を仕入れることはできなかった。
事務所の完璧な防御で、瀬田祐樹は失踪した事になっていたのだ。
淡々とその事実を話す祐樹を目の前にして、俺はぼんやり考えていた。
やっぱりこいつは、タダモノじゃないよな。
人より才覚のあるやつとは、こいつの事をいう。
17歳でデビューして、役作りのためにこいつはどんなことでも貪欲に吸収していった。
こいつの独学力は半端なかったし、完璧だった。
例えば、医者の役、外交官の役、音楽家の役、サラリーマンの役・・・・・なんだってその前に奴は徹底的にその役の事を調査し調べ上げ、本当になりきるために勉強をしていた。
だから、作家デビューを既になしとげているという事をきいて、特に驚きもしなかった。
奴なら、可能だ。 いや、作家の方が天職かもしれない。
顔が割れずに個室に向かえるから、お忍びではもってこいの店だ。
今の風貌の祐樹を見て、あの爽やかな二枚目俳優の瀬田祐樹だと気が付かれることはまずないだろうが、それでも何か感づかれたらそれこそ大スクープものだ。
あの、瀬田祐樹が見つかったっていうことになったら、世間はまた大騒ぎになるだろう。
それくらい、こいつはまだまだ世間から忘れられてはいない。影響力のあるやつだ。
祐樹は、久しぶりのまともな飯なのか、えらいガッツいて食べていた。
「うまい!」
ようやく腹が満たされたところで、祐樹は酒を少しずつ飲みながら事の真相を俺に告白し始めた。
失踪後、隠れるように日本各地を旅していたが、数週間で事務所に見つかってしまったこと。
撮影で亡くした仲間もおり、参っていたこと。
そしてこうなる前から役者を辞めたいと思っていたことを事務所に告げたが、受け入れられなかったこと。
事故が原因でPTSDも発症していて、少し休養をもらえる事になり、事務所の庇護のもと隠遁生活を送っていたこと。
その間にいくつかの文学賞に名前を変えて送ったら、新人賞を総なめに。
自分の正体がある出版社の人間にバレ、事務所にもバレてしまったこと。
事務所とは莫大な違約金で話をつけ、このまま俳優を引退し、作家として活動をつづけるという話がついていること。
今は極秘で動いているが、いつ週刊誌にスッパ抜かれてもおかしくないと、佑樹は酒を口にしながら語った。
この俺でも、祐樹の動向の情報を仕入れることはできなかった。
事務所の完璧な防御で、瀬田祐樹は失踪した事になっていたのだ。
淡々とその事実を話す祐樹を目の前にして、俺はぼんやり考えていた。
やっぱりこいつは、タダモノじゃないよな。
人より才覚のあるやつとは、こいつの事をいう。
17歳でデビューして、役作りのためにこいつはどんなことでも貪欲に吸収していった。
こいつの独学力は半端なかったし、完璧だった。
例えば、医者の役、外交官の役、音楽家の役、サラリーマンの役・・・・・なんだってその前に奴は徹底的にその役の事を調査し調べ上げ、本当になりきるために勉強をしていた。
だから、作家デビューを既になしとげているという事をきいて、特に驚きもしなかった。
奴なら、可能だ。 いや、作家の方が天職かもしれない。