大切なものはつくらないって言っていたくせに
第一印象は、やっぱりあんまり良くなかった。
思った通りのファッション。
綿コットンのダボっとした水色のワンピースにスパッツ。 紺のザックリとしたカーディガンに、カゴバック。足元は白のコンバース。
ま、オシャレっちゃオシャレなんだろうけど、もっと女なら身体のラインとか美しく魅せるファッションてのがあるだろ。

ナンパするみたいにして声をかけたのも失敗だった。

明らかに警戒されている。

そう安安と男に声をかけられて、ついてくるような女の子ではないんだろう。

一応、俺、有名人だしほぼナンパに失敗したことはないんだけどな。

でも、佑樹の名前を出した時に、彼女の表情が揺れたのは見逃さなかった。
そして、なんとか振り切るような思いで、なるべく淡々とした口調で、拒否してきた。

そのさらさらの黒髪は、今までいっさい染めたりヘアダイしたりしていないのだろう。
その頑なさが、俺をやりづらくさせる。

結局、如何にもこうにも説得する手立ては見つからず、俺は彼女が立ち去るのを引き止めることもできなかった。

でも、佑樹とこの女の子の間に何があったんだろう。
珍しく、俺は興味を抱いた。
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