大切なものはつくらないって言っていたくせに
「まいったな。」
俺はそう呟いた。
ピクニックからの帰り道でのことだ。
遥は?という顔で俺を見上げる。

「好きに、、、なっちまったみたいだ。」
俺はまっすぐと遥の黒い目を見てそう告げた。
遥は首をかしげたまま、そしてふわあっとしたあの笑顔で言う。
「そうでしょう?ピクニックいいですよね。また、気候の良いうちに行きましょう。今度はフェルとフェルの犬も一緒にね。」

俺は、力のない笑顔でハハハと笑うしかなかった。伝わらなくて良かったと言う気持ちもあったのかもしれない。

俺の中で警告音が鳴る。
遥は、とても魅力的だ。
本気になったらマズイ。
好きになればなるほど、俺は辛くなる。
現実的に、ローマと日本では遠い。 ローマでの撮影が終わればそう滅多にはここには来れない。
この撮影期間だけの火遊びで俺の気持ちが収まるわけがない。
そう確信があった。
そして、遥には遥の夢がある。

ふと浮かんできたような遥への想いは、俺の中で慌てて蓋を閉めるように打ち消した。

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