大切なものはつくらないって言っていたくせに
それからかもしれない。

俺がさらに女に適当な遊び人を遥の前で演出していたのは。

遥は、そんな俺を軽蔑した目で「サイテ〜ですね。」って吐き捨てるように言う。 そして、悲しいようなでもホッとしたような気持ちになる。
まあ、俺がエラそうだったんだな。「こんな、俺には惚れてくれるな。」という勝手な思いでの行動だった。
気が付いた時には、遥の俺の女性に対しての態度は信頼ゼロだった。

でも、遥が俺の一番近くにいた。そうは言ってもなんでも話せる唯一の相手。友達のような妹のようなプラトニックな関係。
俺はそれで満足しているつもりだった。

自分だって、こんなに遥に気持ちをかき乱されるとは思っていなかったんだ。
遥の昔の恋人がローマまで追いかけてきたという話をフェルから聞いた時だった。
日本に連れ戻しに来たという話だった。

「で、あいつ、遥はそれで今日いないのか?」
「そうよ。」
「・・・・・・どうするんだよ。」
俺は、なるべく動揺をフェルに悟られないように冷静を保つフリをして、ワインを口に含む。
「さあ・・・・・日本帰っちゃうのかしら・・・・。」
「・・・・・・・・・・。」

俺の中の血が変な風に沸騰するのを感じた。
遥が他の男に抱きしめられたり、キスされたりするところを想像しただけで、強烈な嫉妬の渦が俺を襲う。
そして、本当はこんなにも自分が遥を求めている事に今更思い知らされたのだ。
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