大切なものはつくらないって言っていたくせに
このままでいいわけがない。
久しぶりに祐樹が俺の事務所にやって来た。
下のサロンも閉店して、俺一人で上の事務所で残って仕事をしていた。
祐樹は、最近これまた再復活して、作家としていろんなメディアに引っ張りだこだった。
根っからのスターなんだよな。
祐樹自身は、またこんな反響に嬉しくも戸惑っているような気がした。

「お忙しいね。大先生。」
俺は、事務所の冷蔵庫から炭酸水のペットボトルを出して、祐樹に手渡す。
「まあね。」
祐樹は、疲れきった様子でいつものソファにぐったりと座り込む。
「メシ食った?」
「まだ。」
「じゃあ、食いに行こうぜ。」
「いいよ。15分待って。これ、片付けるから。」
俺は、ラップトップと書類の山を指差して答える。
祐樹は、素直に静かにソファでジッとして俺を待つ。
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