大切なものはつくらないって言っていたくせに

「終わったよ。なに食べたい？」
「んー。イタリアンとフレンチ以外かな。」
「和食？ しばらく海外だったんだっけ？」
「うん。取材でイタリアに行ってた。」
「はあー。いいなあー。」

というわけで、俺と祐樹は、深夜の焼鳥屋にいる。
祐樹には、黒のニットの帽子に伊達メガネをかけさせて、一応簡単な変装をさせて。
「そういやあさ、祐樹って今どこに住んでるの？ こっち戻ってきて、家決めたの？ 」
「そんな暇なくて、ずっとホテル暮らしだよ。」
「マジで？ なんか紹介しようか？」
祐樹は少し笑って
「ありがとう。お前はホント面倒見いいよな。でも、なんかまだどこに腰を据えるべきなのかよくわかってないんだ。自分でも。」
祐樹は、生をグッと煽る。
「家の話なんだけどさ、」