大切なものはつくらないって言っていたくせに
彼は、子どもの存在を知っていた。
多分、この間会った時は、知らなかったと思う。
私は、何も言い返すことができず、とにかく話をさせてくれと言う瀬田祐樹を部屋にあげるしかなかった。
ふと、ローマの小さなアパートに彼をあげた時の事を思い出す。
向こうの部屋で寝ている子を起こさないで、という条件で私たちは話をした。

瀬田さんは、ローマに行ってフェルからこの場所を聞き出したらしい。
フェルが、瀬田さんとローマで再会したということはメッセージで知っていた。 そして、その前に私が瀬田さんに会った事をフェルに報告をしなかった事にすごくフェルは腹をたてていた。
その時、フェルは特に瀬田さんに私の居場所を教えたとか、子どものことを伝えたとかそんな事は言ってなかったのに。
しかも、そんなやり取りをしたのはだいぶ前だ。

瀬田さんは、ここに押しかけるのにだいぶ迷ったし、決心がいったと言う。
子どもがいる事は、何度か家の前まで来ている時、知ったと言う。

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