大切なものはつくらないって言っていたくせに
「そんなん、わかってるよ。うまくかわしてるって。 しかし、いったん話しするようになるとみんな興味津々でズバズバ根ほり葉ほり聞いてくるんだよ。」
「げ」
私はほとんどママ友なんかいないのに。
「 仕事でずっと海外にいて、ずっと家族に会えなくて寂しかったってことになってる。」
瀬田さんは楽しそうに言う。
「勝手にストーリー作らないでよね!」
「いや、間違ってないだろ。」
「仕事何してることになってんの?」
「訳あって、主夫ですって言ってる。 ああ、でもそれは失敗したな。暇だと思われて、ランチやサークルに誘われる。」
なんなの、この天性の人たらしは。
「で、ランチ行ったの?」
「うわ、遥、目がつり上がってる。やっぱ妬いてんの?」
「違います。」
「行く訳ないじゃん。恐ろしい。」
「恐ろしい?」
「女の恐ろしさは、よーくわかってますから。」
「あ、そう。私、もう寝る。」
もうなんか、いつかまた女に関するトラブルを起こすのは時間の問題なんじゃないかと思う。

瀬田さんは、立ち上がろうとした私の腕を取る。
「待てよ。」
いつもと違う熱っぽい目で私を見つめる。
「……………。」
「遥、」
「ちょ、待って。」
私は離れようとするが、そのまま瀬田さんはぐいっと私を抱き寄せる。
思えば3ヶ月、こんなムードにはならなかったので、私は慌ててその腕からすり抜けようとする。
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