大切なものはつくらないって言っていたくせに
俺は、半ば強引に遥にキスをする。
サラサラの黒髪をすいてゆっくりと舌を入れて遥のぽってりとした唇を味わうように。
この柔らかい遥の唇も好きだ。 右の目の下にある泣きぼくろも。
そのままつたうようにして、そのホクロにもキスをする。
遥は目を閉じて、少しふるえるように静かにため息を吐く。

樹が起きないように、俺たちは遥の布団の中で静かに交わった。
離れていた間の時間を紡ぐように、俺はゆっくりと遥を愛撫し、ひとつひとつその遥の反応を自分の胸に刻み込む。
身体中に口づけをして、必死で声を殺して出さないようにして、感じている遥がかわいい。
濃密な時間が俺たちの間に流れ、お互いの視線を絡める。
「瀬田さん…………」
「ん?」
「………すき」
ヤバイって、今それ言う? 俺はちょっと笑ってしまう。
「…………やっと言ったな。」
遥も俺の好きなあのふわああとした笑顔を見せ、俺の首に腕を回してキスをしてくる。

もう絶対に離さない。

俺は心の中で誓い、遥に溺れていく。
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