今度こそ、練愛

「有希ちゃん顔が赤いよ? 酔っ払ってる? それとも山中さんの隣だから緊張してる?」



ずばり言われたくないことを言われてしまって、せっかく落ち着かせようとしていた気持ちが揺らいでしまう。
なんて不安定な気持ちなんだろう。



「久しぶりに飲んだから顔が熱くなってきたかも……」



気を紛らわせようと答えてみたものの、すぐには落ち着かない。頰に触れたら思っていたより熱くなってる。



ああ、本当に情けない。
何を話しているのかわからないうちに食べて飲んで、いつの間にか時間が過ぎていた。



「あっ、岩倉君? 静かだと思ったら寝てる?」



高杉さんの声に振り向くと、岩倉君がテーブルに突っ伏して動かない。なんだか視線を感じないと思っていたら、眠ってしまっていたのか。



「ちょっと岩倉君? どうしたの? 気分悪いの?」



高杉さんが何度呼びかけて揺さぶってみても、面倒くさそうな声を上げるだけ。まるで寝起きの悪い子供のようだ。
仲岡さんが岩倉君の頰をつんつんと突くけれど、ぴくりともしない。



「岩倉君、そんなに飲みました? そう言えば今日はあまり話してないですね」

「うん、体調悪かったのかな? でも熱は無さそう」



岩倉君のおでこに触れた高杉さんが首を傾げた。仲岡さんも唇を尖らせて、どうしたものかと考え込む。


< 104 / 212 >

この作品をシェア

pagetop