今度こそ、練愛

休憩を終えて店内に戻ると、まだ山中さんがいた。高杉さんがカウンターでお客さんの対応をしているからか、窓際のテーブル席に着いて通りを眺めている。



「山中さん、ごちそうさまでした。美味しかったです」



仲岡さんと一緒にお礼を言ったら、にこりと笑って立ち上がる。



「喜んでもらえて嬉しいよ、ショーウィンドウが寂しいから花を飾ろうと思う、二人で考えてもらえないかな?」

「私たち、ですか?」



唐突な言葉に仲岡さんと声を揃えて、顔を見合わせた。まさか、そんなことを言われるとは思わなかったから。



「そう、今度の展示会のために二人にも腕を鍛えてもらわないとね、高杉さんに頼ってばかりでは困るから」

「でも、私たちはまだ……、飾るってどんな花を?」

「ショーウィンドウはこの店の顔、店の印象が決まる。通りから見られていることを意識しなければ、どうしたら客を惹きつけることができると思う?」



山中さんの言っていることはよくわかる。以前にも高杉さんに、開店前の掃除をしている時に同じようなことを言われたから。



だけど、どうしろと言われてもすぐには思いつかない。しかも実践しろと言われても、何から手をつければいいのやら。




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