今度こそ、練愛

仲岡さんと私は返事することもできずに首を傾げるばかり。山中さんが痺れを切らして私たちの顔を覗き込んだ。



「じゃあ宿題にしよう、次に僕が来るまでにショーウィンドウを飾っておいて」

「次に……って、いつ来られるんですか?」

「うん、三日後に。それなら十分できるだろ?」
「え? 三日? 早すぎません?」

「そんなことない、深く考えすぎないでインスピレーションを大切に。二人の思うままに飾ってくれたらいい」



意地悪そうな笑みを浮かべる山中さんの威圧感に、私たちは頷くしかない。



すると接客を終えた高杉さんがやって来た。待ちに待った助け舟に仲岡さんも私も、どんよりと曇っていた顔色が晴れていく。



「どうしたの? まさか二人をいじめてるんじゃないでしょうね?」

「いじめてなんかないよ、二人にショーウィンドウを飾ってもらおうと思ってね。展示会に向けての練習を兼ねて」

「ふぅん、いい考えね。私も手伝うわ」

「但しアドバイス程度に留めておいてよ、手を出したら二人の勉強にならないだろ」

「了解、私は口先だけね」



山中さんと高杉さんの会話を聞いてるうちに、どんどん不安になってくる。



「よろしく……」


と言いかけて、山中さんが振り返った。
店のドアから入ってきたのは配達から帰ってきた岩倉君。

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