今度こそ、練愛
疑惑
結局、私は翌日も仕事を休んでしまった。
何かあったら連絡をしてほしいと山中さんに言われたけれど、連絡なんてできなかった。
重い気持ちを叱咤して出社すると、店の外で岩倉君が窓拭きをしている。先に私に気づいた岩倉君が脚立から降りてくる。
「おはよう、もう体調はいいの?」
相変わらず愛想の無い口調だけど、気遣ってくれる言葉が嬉しい。御礼とともに深く頭を下げた。
「おはようございます、御迷惑おかけしてすみませんでした。もう大丈夫です」
「よかった、無理するなよ」
「ありがとうございます、よろしくお願いします」
私が頭を上げるのを待たずに岩倉君が脚立の上へと登っていく。店内へ向かおうと背を向けた私を岩倉君が呼び止める。
「大隈さん、山中さんとはどういう関係? 何かあったの?」
振り返る間もなく投げ掛けられたのは思いがけない質問。ぞわりと体が固まって、足がすくみそうになる。
どう答えていいのかわからない。
本当に関係なんて何にもないし、単なる私の片思いでしかないのだから。
「どういうって? べつに何にもないし関係ないけど……」
「そっか、俺の勘違いかな……ごめん」
と言ったきり、岩倉君は目を逸らしてしまった。