今度こそ、練愛
白を基調としたレストランの店内は明るくて、高い天井まで張られた窓ガラスからは青い空と青い海。溢れるほどの日差しと日差しを反射する波の光で眩しいほど。
幸い窓際の眺めの良い席に着くことができて母は大満足。終始笑顔で川畑さんのことを昭仁と繰り返し呼んでは、次々と質問を投げかける。
川畑さんは全くブレない。
打合せで簡単に説明した状況だけで、差し障りない程度に話を膨らませていく。
彼に振られた話に私が付け加える感じ。
私が余計な口を挟んでボロが出ないように、率先して話してくれているようにも思えた。
「昭仁さん、ありがとう。今日は本当に楽しかったし、こうして話をすることができて本当に良かった」
「僕の方こそありがとうございます、本当はもっと早くご挨拶に伺いたかったのですが、申し訳ありません」
神妙な顔で謝る川畑さんはまるで誠実の塊。
一年前に昭仁から結婚しようと言われたことは母も知っている。それ以来挨拶に来ないから母は苛立っていたのだから。
「いいえ、謝らないで。仕事が忙しかったりいろいろあるから仕方ないわよ、昭仁さんに会えて安心したわ」
ほっとして目を伏せる母を見たら胸が痛む。私はとんでもない嘘を吐いているのかもしれない。
罪悪感と言い出せないもどかしさに、ただ唇を噛んだ。