今度こそ、練愛
ああ、ムカついきた。
そういう上から目線の男って、大嫌い。しかも顔が好みじゃないから余計に腹が立つ。
今にも触れそうな福沢さんの手を払って、きっと睨んだ。
「結構です、さっきから要らないって言ってんのにどうしてわかんないの? 何回同じこと言わせるつもり?」
イライラする気持ちをすべてぶつけるように、ひと息で吐き出した。福沢さんは手を差し伸べたまま呆気に取られてる。
だけど構うものか、口に出して言わないとわからないなら、今すべてを言ってやるんだ。
力では負けるかもしれないけれど、口では絶対に負けたりしない。
「何を勘違いしてるのか知らないけど、寂しいのはあなたじゃないの? 私があなたに合わせてあげてるのがわからない?」
「な……、何で俺が? 馬鹿言うな、彼氏にフラれて寂しかったのはお前だろ? だから他人の彼氏を寝取ったんだろ? 寂しいなら黙って抱かれてろよ」
ちょっと待て、どうしてそんなこと知ってるの?
社内での噂は客先にまで届いていたの?
一瞬怯みそうになったけれど、福沢さんのドヤ顔を見たら私の闘争心がさらに加速する。アスファルトについた手に力を入れて立ち上がる体勢に。
お尻が浮いた私の後ろを通り過ぎようとした車が急に減速して、路肩に停まった。