今度こそ、練愛

仲岡さんは夕方帰っていった。学童保育に預けている子供を迎えにいくとのこと。



「子育てしながら働くって大変ですね」

「うん、大変だけど楽しいのよ。家でじっとしてるより外に出てる方が気楽だし、私は家事が嫌いだから特にね」



仲岡さんは笑うけど、家事が苦手には見えない。きっと切り替えが上手くて、家ではいいお母さんなんだろう。



仲岡さんが帰った後、高杉さんが卓上カレンダーとノートを持ってきた。



「大隈さんのシフト作ろうか、来月末までで予定が入ってたり都合の悪い日はある?」

「とくに予定はないです、目一杯入れてください、土日はずっと入れてもらっていいですから」

「本当にいいの? すごく助かるわ、土日は仲岡さんに頼みづらいから」

「それなら仲岡さんの代わりに私を土日に入れてください、これから覚えていきます」



仲岡さんが働きやすいように、私が協力できることがあるならしていきたい。前とは違う少人数の職場だから、少しでも風通しが良くなるように。



「ありがとう、助かるわ、急がなくていいからゆっくりと覚えていってね」

「はい、よろしくお願いします」



もうひとりはどんな人だろう。仲岡さんのようないい人だったらいいな……と期待と不安が入り混じった気持ち。



特に大きなトラブルもなく勤務初日は無事終了した。


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