今度こそ、練愛
「明日の午後、仲岡さんと一緒に配達をお願いね」
翌朝、花を仕分けながら値札をつけていく作業をしていると高杉さんに言われた。
配達と聞いただけで必要以上に身構えてしまって、『仲岡さんと一緒に……』という部分をすっかり聞き逃していた。
「配達ですか? ひとりで……ですか?」
「違うよ、仲岡さんと一緒にね。ここから近い会社なの、お花を渡してくるだけの簡単な仕事よ」
私はよほど狼狽えていたのだろうか。
高杉さんは宥めるような笑顔を見せてくれる。
「ありがとうございます、配達はよくあるんですか?」
「ある時はあるね、ちょこっとしたのは会社関係のお祝いや送別の時とか、自宅のパーティや店舗の開店祝いなんかもあるよ」
「そういえば前の会社で、退職される方に渡す花束を近所の花屋さんに頼んでいました」
「そうそう、一応渡す方の性別や年齢やどんな感じがいいか希望があれば聞いて、予算に合わせて作ってるのよ」
「そうなんですね……、知りませんでした」
「大隈さんも少しずつ花の名前やアレンジも覚えていこうね、結婚式場の仕事も最近入ってきてるから手伝ってもらいたいから」
「はい、頑張ります」
結婚式場の華やかなイメージが頭に浮かんで気持ちまで晴れやかになる。まだ花の名前もわからない状態だけど、早く私も戦力になりたい。