鬼部長と偽装恋愛はじめました
夕飯を済ませ、寝支度を整えたところで、祐平に切り出した。

「あのね、祐平。実は……」

母から言われたことを話しながら、呆れられたらどうしようと不安もある。

プロポーズをされたのならまだしも、祐平の気持ちも分からないくらいなのに……。

おずおずと話し終えた私に、祐平はしばらく黙っていた。

引かれたかな……。

ドキドキしていると、祐平が言った。

「オレは、香奈美と離れたくない。それは、今もこれからも、変わることはないと思う。それがオレの答え」

「え?」

それが祐平の答え……?

いまいち意味が分からないでいると、祐平がそっと頬に触れた。

「この先、たしかにいろんな問題が出てくると思う。たけど、オレが香奈美を好きだという事実は変わらない。そのときに、ひとつ、ひとつ乗り越えていこう」

「うん……」

こうやって、真剣に私の話を聞いてくれる。

そんな祐平が、たまらなく愛おしい。

私といつだって誠実に向き合ってくれる人は、今まで誰もいなかったから……。
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