鬼部長と偽装恋愛はじめました
私と祐平が付き合い始めて約一年。

周りにはすっかり公認となった、私たちの仲。

みんな最初こそ驚きと、噂を聞いていた人たちは“やっぱりか”という反応とで、盛り上がっていた。

それも懐かしい思い出になりかけた頃、私の異動が決まってしまった。

「やっぱり、私が異動だったね。商品開発部の事務課よ」

祐平とふたり、バルコニーで夜景を眺めながらため息をつく。

私たちの会社は、社内恋愛は自由だけど、その代わりどちらかが異動になるのが通例。

部長である祐平より、事務の私が異動になるのは珍しくなかった。

だから、予期していたとはいえ、やっぱり気が滅入る。

「商品開発部なんて、やりがいがあるじゃないか。営業部とも連携するし」

祐平は私に激を飛ばすように言った。

だけど私は、やっぱり寂しい。

「フロアが違うし、社内でなかなか会えなくなるね」

口を尖らせる私に、祐平は苦笑した。

「そうだな。じゃあ、これでオレが側にいるって感じてくれるか?」

「え?」

祐平はどこへ持っていたのか、小さな箱を私の目の前に差し出す。

そしてそれを開けると、中にはキラキラと輝くダイヤの指輪が入っていた。
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