鬼部長と偽装恋愛はじめました
たて爪にダイヤが挟まれていて、シンプルなのに品がある。

「祐平、これは?」

ドキドキとしながら祐平を見ると、彼は小さく微笑んだ。

「結婚しよう、香奈美」

「えっ⁉︎ う、うん……」

ウソ……、まさかプロポーズをしてもらえるなんて思わなかった。

「香奈美の誕生日とか、クリスマスとか、プロポーズの日にちをいろいろ考えたんだけど、異動が決まって落ち込むだろうなって、今日にさせてもらった」

「いつでもいいよ……。プロポーズをしてもらえるだけで、嬉しいもん」

涙で視界が滲みながら、左手の薬指に指輪がはめられていくのを見つめる。

いつかは……って願ってたけど、こんなに早く叶うなんて。

「その代わりっていうか、結婚式は香奈美の誕生日にしよう。その日に、お前をオレの奥さんにするから」

「うん。ありがとう……」

涙が溢れて止まらないまま、私は祐平に抱きつく。

嬉しくて、幸せで、言葉にならない。

そんな私を抱きしめ返した祐平は、そっと囁いた。

「愛してるよ、香奈美」
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