鬼部長と偽装恋愛はじめました
祐平との約束どおり、結婚式はプロポーズから半年後の私の誕生日に行われた。

チャペルで祐平と愛を誓うと、胸に込みあげてくるものがある。

「あんなに、苦手な上司だったのに」

新婚初夜、入籍も済ませ、私は正真正銘の祐平の奥さんになった。

ホテルに着き、やっと落ち着ける時間になり、私たちはベッドに腰を下ろす。

「披露宴のスピーチでも言われてたな。そこまで、オレは嫌われてるとは思わなかった」

クックと笑う祐平に、私は照れ笑いをする。

「ねえ、祐平。私ね、もう迷わないことにする」

「え? 」

祐平は、私がなにを言おうとしているのか分からないらしく、キョトンとしている。

「この一年、ずっと考えてたの。ほら、もし祐平が海外勤務になったらっていう……」

「ああ、そういえば、そんな話をしたよな」

祐平は思い出したように、頷いた。

「私、やっぱり祐平がかけがえのない人だから。仕事を辞めてでも一緒についていく」

「香奈美……」
< 113 / 116 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop