鬼部長と偽装恋愛はじめました
若干の厚みがあるから、ただの手紙じゃなさそうだ。

少しの重さと、封筒の上から触ると硬さを感じる。

「届いてたよ。これ、一体何なの?」

私は封筒をローテーブルに置いた。

「あっ、届いてた? 良かった。それ、あんたのお見合い相手の写真よ。中身を見てみなさい」

「お、お見合い⁉︎」

慌てて封を開け中身を出すと、クリーム色の上品な台紙が入っている。

それを開くと確かに、写真がはめこまれていた。

「どう? なかなか、いい男でしょ? こっちの地主の息子さんよ」

母の自慢げな言い方が分からなくもなく、端正な顔立ちの優しそうな男性だ。

年齢は、30代半ばくらいか。

「う、うん。たしかに、男前な人ね。でも、だからお見合い? 訳がわからないんだけど」

久しぶりの電話がこれじゃ、本当にため息が出る。

だいたい、実家には帰らないつもりなのだから、地主の息子と結婚なんて素敵な人でもお断りだ。

「あのね、お母さん。何で私がお見合いしないといけないのよ。絶対にイヤ。だいたい、これくらいイケメンなら、お見合いしなくても相手がいるでしょ?」

「だって、こっちってかなり田舎じゃない? なかなか、お嫁さんにきてくれる人がいないんだって」

当たり前だとでも言わんばかりに、母の声は大きくなる。

「私に帰って結婚しろってことなんでしょ?」

「当たり前でしょ。そんなゴミゴミした都会より、こっちの方が人間にはいいって。相手の方は金持ちだし、香奈美も幸せになれるわよ」
< 12 / 116 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop