鬼部長と偽装恋愛はじめました
やっぱり思ったとおりで呆れてくる。

「お母さん、私は望んでこっちで仕事をしてるのよ? それを捨ててまで、何で地元に帰らないといけないわけ?」

あくまでも反抗する私に、母はまるで引く様子もなく続けた。

「香奈美は、見た目に惑わされてるだけよ。きらびやかな都会は、それはいいだろうけど、いつかは疲れるって」

「私はそんなことないし、帰るつもりもない」

「そんなこと言って。どうせ、そっちでは彼氏いないんでしょ? 素直にお見合いしなさいよ」

「え? 彼氏……?」

そうか、彼氏がいれば断る口実になるんだ。

母がこっちへ来ることはないし、嘘も方便というし、ここは誤魔化して諦めてもらおう。

「ごめんね、お母さん。言ってなかったんだけど、私付き合っている人がいるの」
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