鬼部長と偽装恋愛はじめました
「あの、若狭部長」

声をかけると、パソコンを見ていた部長が、真顔で私を見上げた。

「なに?」

たったひと言なのに、ぶっきらぼうな言い方をされて怯む自分がいる。

もう、部長ってなんでこんなに怖いんだろう。

「実は、ご相談したいことがあって。お仕事が終わってからでいいです。お時間いただけますか?」

緊張気味にそう言った私に、部長は一瞬間を空けて答えた。

「いいよ。七時でいいか?」

「はい、構いません。ありがとうございます」

部長の鋭い視線に耐えきれず、さっさと目をそらした私はデスクに戻る。

疑うような目つきをされたのが不安だけど、もう後には引けない。

週末のピンチを乗り越えるためにも、部長に頼み込むしかないからだ。

そして七時になり、部長は私をオフィスの奥にある会議室へ行くよう指示する。

いよいよだ……と思うと、背中が汗ばんできた。
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