鬼部長と偽装恋愛はじめました
白々しく言うと、部長は絶句している。

「お前……上司を脅すのかよ。だいたいそうなったら、本城だって不都合だろ?」

「構いません。むしろ、部長のようなイケメンでエリートの方の彼女と間違えられるなら、光栄ですから」

我ながら、分かりやすいウソをついたと思う。

だけど、週末をなんとか乗り切りたい、それでいっぱいだった。

部長は言い返せないのか、困ったように口に手を当てている。

「もし、私のお願いを聞き入れてくださったら、噂は違うと否定してまわります。他に彼氏がいると、誤魔化したって構いません。だから、お願いします!」

頭を下げて返事を待っていると、頭上からため息混じりの声がした。

「分かったよ……。その代わり、その日だけだ。その後は、一切引き受けない」

「ありがとうございます! 本当に、嬉しいです」

顔を上げると、呆れた顔の部長がいる。

「ったく、そうまでしてここに残るんだから、しっかり働いてもらうからな」
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