鬼部長と偽装恋愛はじめました
「もちろんです! ますます、頑張りますから」

しばらくは、部長の怒号にも素直に従おう。

表情が緩みそうになるのを抑えながら、会議室を出ようとしたときだった。

「おい、ちょっと待て」

部長に不意に腕を掴まれた。

「なんですか?」

「お前さ、なにがなんでもお母さんを説得したいんだろ? だったら、ぬかりなくしようぜ」

さっきまでは嫌そうな顔をしていたのに、部長はニヤッと笑みをみせている。

「ど、どういうことですか?」

警戒心をもちながら見つめると、部長は会議室に置かれているメモ用紙とペンを持ってきた。

「これ、オレの番号とメアド。お前のも教えて」

「え? 両方……ですか?」

連絡を取り合わないといけないから、連絡先の交換が必要なのは分かるけど、番号だけで十分だと思う。

それなのに、メアドまで……?

番号まで書いたけど、アドレスをなかなか書けないでいると、いつもの低い部長の声がした。

「オレに、恋人の振りをしてほしいんだろ?」
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