鬼部長と偽装恋愛はじめました
「えっ⁉︎ やめてよ、私はイヤよ」
部長とお似合いって、なんて心外な言葉だろう。
思いきり嫌悪感を出して苦い顔を向けると、真由は楽しそうに声をひそめて続けた。
「実は結構噂されてるんだよ? 香奈美と若狭部長って、お互い好き合ってるんじゃないかって」
「な、なにを言うのよ。どこをどう見たら、そんな考えになるの⁉︎」
私と部長が好き合っているなんて、噂は初耳だし内容がシャレにならない。
動揺を隠せない私に、真由は平然と言った。
「だって、ふたりはなんだかんだ言って、いつも絡んでるじゃない。それに、香奈美もたくさんいる上司や先輩の中でも、部長にしか声をかけないし」
「それは、大きな誤解よ。だいたい、声をかけてるんじゃなくて抗議してるの。他の上司はもっと理解があるから、私が歯向かわないだけで……」
と弁解しても、真由はどこか疑いの眼差しを向けている。
「部長も部長よね。香奈美だけじゃない? あんなにキツく言う相手って」
「そんなことはないでしょ? 怒号は毎日、いろんな人に向かってるわよ」
半ば呆れ気味にそう言うと、真由は少し考えるように宙を見上げ、そして私を真っ直ぐ見据えた。
「ううん、絶対に違う。他の人に対しての方が、部長はかなり素っ気ないから」
と言われ、私は言葉に詰まった。
万が一、部長が私を好きだったとしたら……、やっぱりあんなキツイ言い方をするはずがない。
そう思ったら、真由の言うことには、どうしても納得できなかった。
部長とお似合いって、なんて心外な言葉だろう。
思いきり嫌悪感を出して苦い顔を向けると、真由は楽しそうに声をひそめて続けた。
「実は結構噂されてるんだよ? 香奈美と若狭部長って、お互い好き合ってるんじゃないかって」
「な、なにを言うのよ。どこをどう見たら、そんな考えになるの⁉︎」
私と部長が好き合っているなんて、噂は初耳だし内容がシャレにならない。
動揺を隠せない私に、真由は平然と言った。
「だって、ふたりはなんだかんだ言って、いつも絡んでるじゃない。それに、香奈美もたくさんいる上司や先輩の中でも、部長にしか声をかけないし」
「それは、大きな誤解よ。だいたい、声をかけてるんじゃなくて抗議してるの。他の上司はもっと理解があるから、私が歯向かわないだけで……」
と弁解しても、真由はどこか疑いの眼差しを向けている。
「部長も部長よね。香奈美だけじゃない? あんなにキツく言う相手って」
「そんなことはないでしょ? 怒号は毎日、いろんな人に向かってるわよ」
半ば呆れ気味にそう言うと、真由は少し考えるように宙を見上げ、そして私を真っ直ぐ見据えた。
「ううん、絶対に違う。他の人に対しての方が、部長はかなり素っ気ないから」
と言われ、私は言葉に詰まった。
万が一、部長が私を好きだったとしたら……、やっぱりあんなキツイ言い方をするはずがない。
そう思ったら、真由の言うことには、どうしても納得できなかった。