鬼部長と偽装恋愛はじめました
なんとか母を説得して、ようやく帰路につけることになりホッとする。
二時間程度だったのに、とても長く感じられた。
駅まで部長と見送りに行くと、母は別れ間際に、私にニヤッとして言った。
「若狭さんが、香奈美との将来を真剣に考えてくれていて安心したわ」
「ハハ……。だから、お母さんは安心して帰ってね。そして佐原さん、申し訳ありませんでした。私の答えは、もうお分りだと思いますので」
ペコリと頭を下げると、佐原さんは口角を上げて微笑んだ。
「オレは、まだ納得してないよ。学会で来る機会があるし、香奈美ちゃんにはまた会いたいと思う」
「えっ……?」
諦めてくれてなかったの?
呆然とする私の肩を軽く叩いた佐原さんは、出発を告げるアナウンスが流れ始めたと同時に、母たちと新幹線に乗り込んだ。
「和樹のやつ、本気なんだな。どうする? たぶん、しつこくやって来るんじゃないか?」
部長の声がして、我に返り振り向く。
腕組みをする部長は、私を試すように見た。
「オレたちが付き合ってないことがバレるのも、時間の問題だな。どうする?」
「どうするって……」
部長には、今日だけの恋人役としてお願いしたのだから、これ以上のワガママは言えない。
それでなくても、イヤな思いをさせてしまったのだから。
二時間程度だったのに、とても長く感じられた。
駅まで部長と見送りに行くと、母は別れ間際に、私にニヤッとして言った。
「若狭さんが、香奈美との将来を真剣に考えてくれていて安心したわ」
「ハハ……。だから、お母さんは安心して帰ってね。そして佐原さん、申し訳ありませんでした。私の答えは、もうお分りだと思いますので」
ペコリと頭を下げると、佐原さんは口角を上げて微笑んだ。
「オレは、まだ納得してないよ。学会で来る機会があるし、香奈美ちゃんにはまた会いたいと思う」
「えっ……?」
諦めてくれてなかったの?
呆然とする私の肩を軽く叩いた佐原さんは、出発を告げるアナウンスが流れ始めたと同時に、母たちと新幹線に乗り込んだ。
「和樹のやつ、本気なんだな。どうする? たぶん、しつこくやって来るんじゃないか?」
部長の声がして、我に返り振り向く。
腕組みをする部長は、私を試すように見た。
「オレたちが付き合ってないことがバレるのも、時間の問題だな。どうする?」
「どうするって……」
部長には、今日だけの恋人役としてお願いしたのだから、これ以上のワガママは言えない。
それでなくても、イヤな思いをさせてしまったのだから。