鬼部長と偽装恋愛はじめました
それは予想もしていないお誘いで、私はすぐに返事ができなかった。

「か、買い物ですか?」

「ああ。香奈美の言うとおり、テーブルもいいかなって。行くだろ?」

と言いながら、部長はいつの間にか車のキーを手にしていて、ヒラヒラと見せている。

「行くだろって、誰かに見られるかもしれないんですよ? いいんですか?」

ただでさえ、私たちの仲を疑う噂があるのに、部長は平気なんだろうか。

すると、部長はまるで私を見下すかのような目つきで言った。


「だいたい、先にオレに彼氏役を頼んできたのはお前だろ? 諦めろよ」

「えっ⁉︎ でも、それじゃあ、部長も誤解されますよ……」

噂を話したとき、嫌そうな顔をしてたのを思い出す。

私と一緒のところを見られたら、誤解を解くことは不可能になってしまうのに。

「だってオレたち、結婚前提に付き合ってるんだろ?」

ニヤッと笑った部長は、「ほら、行くぞ」と言って、私の腕を引っ張った。
< 43 / 116 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop