鬼部長と偽装恋愛はじめました
こんな優しい言葉をかけてもらえるなんて、全然想像もしてなかった。

部長は仕事に厳しくて、怖い人だと思っていたのに。

「ありがとうございます……。突然、部長の家に転がり込んだのに、私を責めないんですね」

見たことのない部長ばかりで、私の心は乱されていく。

今まで会社で抱いていた、部長に対する嫌悪感が、少しずつ溶けていくみたい……。

「まあ、それもお前とならいいかもな。じゃあ、行こう」

部長に手を引かれるように部屋を出ると、そのまま地下駐車場へ行った。

私とならいいって、どこまで本気で言っているんだろう。

すっかり部長を意識した私は、握られている手にすら緊張する。

ひんやりとする地下駐車場着くと、そこには高級車がズラリと並んでいた。

「こんなに、高級車ばかりってスゴイですね。ちょっと、世界が違う感じ」

ため息混じりに呟くと、部長は苦笑いをした。

「若干引き気味のところを申し訳ないけど、オレのもそうだな」

部長が立ち止まったのは、やっぱり有名な高級車の前だった。
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