鬼部長と偽装恋愛はじめました
シルバー色のメタリックなボディーは、地下のライトを眩しいくらいに反射している。

ロゴから、それが海外メーカーのものだと分かり、ますますア然とした。

「私、高級車も外車も乗るのは初めてです」

しかもこれ、左ハンドルじゃない。

車を食い入るように見る私を、部長は呆れたような顔をした。

「そういちいち、驚くなよ」

そしてキーを開けて、私に乗るように促した。

車内はゆったりと広く、色合いも黒と茶色で統一されていてシックで落ち着く。

嫌みのない甘い香りも漂っていて、色気すら感じていた。

「香奈美、港の方に新しくできた店を知ってるか?」

部長はシートベルトを締めながら聞いてきて、私は一瞬考えた。

「えっと、北欧家具の店ですよね? テレビで宣伝してました」

でもあそこって、高い家具が多いことでも有名なはず……。

「そこに行くから。なにか部屋に合いそうな小物とかあったら、適当に見繕って」

そう言った部長は、車を走らせ始めた。
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