鬼部長と偽装恋愛はじめました
「えっ? 私が考えるんですか?」

エンジン音が全く気にならないほど静かな走りの車内で、私の声が響いて部長はしかめっ面をした。

「そうだよ。オレの部屋、シンプル過ぎるだろ? 香奈美はセンス良さそうだから、選んでほしいんだけど」

「な、なんで私なんですか⁉︎」

たしかに、部長の部屋はシンプルだった。

入ったときに、ソファーとリビングテーブルに、ダイニングテーブルとテレビくらいしかなかったから。

飾り気がなく、色も茶系のワントーンだったのを覚えている。

だけど、私が部長の家の小物を選ぶのって、おかしくない?

と、疑問というより不満に近い顔をしていると、部長はチラリと私を見て不機嫌そうに言った。

「お前さ、そもそもなにが原因で、こうなってるのか分かってるのかよ」

「はい……。すみません……。私のせいです」

それを言われると肩身が狭く、小さくなるしかない。

黙っておとなしくしていると、ふと部長が私の手を握ってきた。
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