鬼部長と偽装恋愛はじめました
バルコニーに置くテーブルも、部屋に飾る小物も、なんとか選び終えたけど、それよりも私たちに向けられた視線に意識が集中していた。

「あの……、祐平ってモテるんですね。女性の視線、凄かったですけど」

帰りの車の中で、どっと疲れが出た私は、ため息混じりにそう言う。

すると、祐平に呆れたように笑われた。

「お前さ、名前を呼び捨てにして敬語って、変だからやめろよ」

「だって……。いきなり、いろんなことが進んでいって、頭がついていかないんです」

「それはオレも一緒」

と言われ、返す言葉がない。

私より、この状況に振り回されているのは祐平だ。

「本当に、ごめんなさい。でも、私とこのままの状態でいいの? 祐平なら、絶対にモテるのに。同じ会社の人でなければ、すぐに恋に落ちそう」

なにせ、見た目は抜群にいいのだから。

「香奈美、最後の言葉は嫌みか?」

苦い顔をする祐平を見て、しれっと答えた。

「少し……」
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